キミとの距離は1センチ
心外そうに片眉を上げて、伊瀬がわたしを睨む。



「うるさいな、ほっとけよ。……で、他に用は?」

「ん、ない」

「………」



もう用は済んだとばかりにひらひら右手を振れば、最後にまたひとつため息。

そうして伊瀬は、自分のデスクへと引き返した。

その背中から、視線を外したところで。左隣りに座っているさなえちゃんが、ぽや~んと頬をピンク色に染めていることに気付く。



「さなえちゃん?」

「あ、はいっ! なんですか?!」

「大丈夫? なんか顔、赤いような……」

「だっ、だいじょうぶです……!」



ぶんぶん顔の前で両手を振り、元気アピールをするさなえちゃん。

そう?と若干首をひねりながらも納得して、わたしは起動が完了したパソコンの中のメールアイコンを開いた。

昨日退社した以降に受信したメールをチェックして、必要なものにはちゃかちゃか返信をする。

朝礼が始まる前に終わらせると決めてる、わたしの日課だ。
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