キミとの距離は1センチ
「……珠綺ってさ。なんだかんだで、伊瀬くんのこと大好きだよね」



くるくるとフォークにパスタを巻き付けながら呆れたように都がそう言うから、わたしはお味噌汁をこくりとひと口飲んでから、答える。



「そりゃあ、好きだよ、同期だもん。都のことも大好きだし、都だって、伊瀬のこと好きでしょ?」

「……それはまあ、そう言われればたしかにそうだけどさ」



なんだか複雑な表情で、都はなんだか煮えきらないことを言う。

今度はさくさくのカツに箸を伸ばしながら、わたしは首をかしげた。


昼休みの社員食堂は、今日もたくさんの社員たちでごった返している。

先に着いていた都が運良く空いていた席を確保してくれていたから、こうしてわたしはヒレカツ定食、都はたらこスパゲティーを堪能できていた。

そこで最近伊瀬の態度がよそよそしい、という話をしたところ、まあ、冒頭の言葉が返ってきたわけで。



「ていうか、相手が誰でも、急によそよそしい態度取られたら気になるじゃない」

「……まーね」

「え、なによう、その反応」



やっぱりなんだか、今日の都もいつもと違う感じだ。

え、なに、同期揃ってわたしになんかあるわけ?
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