キミとの距離は1センチ
+゚:7/ 戸惑いは雨の匂い
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「……雨、降りそうですね」
まだ完全には闇に包まれていない空を見上げて、ぽつりとつぶやく。
同じように、隣りにいた宇野さんも顔を上げた。
「そうだね、早く入っちゃおう」
「はい」
彼に続いて、お店ののれんをくぐる。
とたんに食欲をそそる香りが、わたしたちを出迎えた。
現在時刻は午後7時前。仕事終わり、宇野さんが連れて来てくれたのは、会社からもほど近い小料理屋さんだった。
最近できたばかりのお店で、穴場なんだって。ほんと、宇野さんは感心するくらいこういうことに敏感だ。
「どーぞ」
「あ、ありがとうございます」
甚平みたいな格好をした店員さんに案内されたのは、すだれで区切られている掘りごたつ式の個室だった。
宇野さんに促されて、わたしは奥側の座布団に腰をおろす。
「とりあえず、生ビールふたつでいいよね?」
「はい」
おしぼりを渡してくれた店員さんに、宇野さんが飲み物を伝えてくれる。
……ほんと細やかだわぁ、宇野さん。
あっという間に運ばれて来たビールジョッキで乾杯して、メニューを見ながら料理もいくつか頼んだ。
「そういや、こないだ山田がさあ……」
「あはははは!」
おもしろおかしくいろんな話をしてくれる宇野さんのおかげで、笑いが絶えない。
……都は、ああ言うけど……やっぱりわたしは、ちゃんと宇野さんのことを、すきだと思う。
だって一緒にいると、こんなに、楽しいんだもん。