キミとの距離は1センチ
「……実はね、珠綺ちゃん。今日は俺、大事な話があって」



宇野さんがそんなことを言い出したのは、デザートのゆずシャーベットを食べているときだった。

相変わらず口元に笑みは浮かべているけれど、なんだか真剣な眼差しで、彼がこちらを見つめているから。

わたしはスプーンを置いて、両手を膝の上に乗せた。



「話、ですか」

「うん。実は今日のデートは、それが1番の目的だったんだけどね」



若干緊張するわたしが見つめる先で、宇野さんが顔の前で両手を組んでひじをテーブルの上に乗せる。



「……こないだ内示があって、休み明けの月曜日に、正式な辞令が出るんだけどね。俺、来月から九州支社に転勤になったんだ」

「……え、」



まさに寝耳に水、な話だ。

驚きのあまり、わたしは固まってしまう。

そんなわたしを見て、宇野さんはちょっとだけ苦笑した。



「ごめん、びっくりしたよね。……九州支社にいたマネージャーが、退職することになったらしくてね。その後釜として、俺が行くことになったんだよ」

「……そ、そうなんですか……」



ああ、そうか。そういうことなら、きっとこれは、栄転だ。

やっぱり、宇野さんはすごい。この若さで、営業成績が優秀な九州支社のマネージャーの後任に、抜擢されたんだから。
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