キミとの距離は1センチ
視線の先には、小ぶりなダンボールがある。



「ああなに、あれ?」

「……そう」



なんだか歯切れが悪いのは、つまりそういうことだからだろう。

わたしは緩む口元を隠そうともせず、ぽんとその肩に片手を置いた。



「まあまあ。背が足りないのは仕方ないって」

「……おまえさ……そろそろいい加減にしろよ……」



キロリと睨んでくるその視線をはねつけて、伊瀬の前に足を進める。

あれね?ともう1度確認してから、そのダンボールに向かって手を伸ばした。



「ぐぬぬ……」

「……無理だって。おまえ散々俺のこといじり倒すけど、佐久真だってそこまで身長高いわけでもないし。つーかたった1センチ差だろ」



必死に背伸びしながらひょいひょい手首を動かしてみるけど、全然触れる気配がない。

こ、これは強敵……ブラウスの脇破けちゃいそう……。


ふう、と、背後から息を吐く音が聞こえた。
< 14 / 243 >

この作品をシェア

pagetop