キミとの距離は1センチ
+゚:8/ 変わる関係
+゚:8
「──大丈夫?」
自分に向けられていると思われるその言葉に、わたしはゆるゆると、うつむかせていた顔を上げる。
そして目に映ったのは、切ったばかりみたいな真っ黒い短髪に、黒縁メガネと色白な肌。
思っていたよりもすぐそばで、自分と同じくらいの年頃の男の人が、じっとこちらを見下ろしていた。
「……ああ、やっぱり、佐久真さんだ」
スーツ姿のその男性は、わたしの顔を覗き込むようにして軽く首を傾ける。
……わたしの名前、知ってる?
ていうかこの人、なんか見覚え、あるような……。
「……あの……」
「ああごめん、しゃべんなくていいよ。すっごい顔色悪いけど、貧血?」
言いながらその人は、駅の片隅でうずくまるわたしに寄り添うように、隣りへとしゃがみこんだ。
遠慮がちに肩を抱いて、背中をさすってくれる。……一見とっつきにくそうなのに、すごく親切な人だ。