キミとの距離は1センチ
《なに、だから、手近なとこで佐久真と付き合って、今度は自分の転勤が決まったら、簡単に捨てるのか? そんなの、勝手過ぎんだろ》



俺の家で、宇野さんとの別れ話の経緯を聞いていたとき。

なんとか怒りを抑え込みながら話す俺に、佐久真は辛そうに目を伏せて。



《わたしも、悪いところあったんだよ。だから、宇野さんのことばかり、責められないの》



そう言って、ぽろぽろ、ぽろぽろ、佐久真は涙を流した。

そんな彼女を見て、胸が締めつけられた。



《ご、ごめんわたし、みっともない……っ今、止めるから、》



いつも気丈に振舞っている佐久真が、ただの同期である俺の前で、素直に泣きじゃくっている。

……けどそれは、それだけ彼女が、宇野さんのことを想っていたということで。

今も、すきだということで。



《な、なんで、伊瀬……》

《いいじゃん、傷の舐め合い。俺もちょうど、溜まってたし》

《な……なに、言って……》



無理やり重ねたくちびるは、それでも甘く、やわらかかった。


──どうせ叶わない想いなら、めちゃくちゃになってしまえばいい。

そう思いながら、抵抗する彼女の両手を押さえつけて、床に押し倒して。

彼女を守る服を乱して、その肌に、触れて。
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