キミとの距離は1センチ
「──それでは、今回の新CMのコンセプトは、そういう方向で行くということで」
「はい。お疲れさまでした」
提携している広告会社との打ち合わせを終えて、俺はひとり、会社への帰途についていた。
ちなみに打ち合わせに同行していた大谷部長は、今日はこのまま直帰らしい。まったく、うらやましいことだ。
地下鉄の駅から地上に出て銀行前の横断歩道を渡ると、すぐにブルーバード本社が見える。
黒い石造りの階段の手前まで来たところで、ふと視線を上げると。談笑しながら階段を降りてくる見知ったふたり組を見つけて、思わず足を止めた。
そしてそのふたりも、俺の姿に気付いて。同じように、立ち止まる。
「……あ、伊瀬さん」
つぶやいたのは、ふたりの内のひとりである、木下さんで。
そして隣りに立つ佐久真は、黙ったまま、俺から視線を逸らした。
その彼女の態度に、ずきりと、胸の奥が軋む。
「……お疲れさまです、伊瀬さん。今戻ったんですか?」
「ああ、お疲れさま。部長は直帰だけどね、俺だけ仕方なく戻って来た」
「あはは、仕方なくですか」
俺の軽口にくすくす笑っている木下さんの横で、相変わらず佐久真は、うつむいている。
……これはもう、駄目だな。完全に、俺のこと拒否してる。
「はい。お疲れさまでした」
提携している広告会社との打ち合わせを終えて、俺はひとり、会社への帰途についていた。
ちなみに打ち合わせに同行していた大谷部長は、今日はこのまま直帰らしい。まったく、うらやましいことだ。
地下鉄の駅から地上に出て銀行前の横断歩道を渡ると、すぐにブルーバード本社が見える。
黒い石造りの階段の手前まで来たところで、ふと視線を上げると。談笑しながら階段を降りてくる見知ったふたり組を見つけて、思わず足を止めた。
そしてそのふたりも、俺の姿に気付いて。同じように、立ち止まる。
「……あ、伊瀬さん」
つぶやいたのは、ふたりの内のひとりである、木下さんで。
そして隣りに立つ佐久真は、黙ったまま、俺から視線を逸らした。
その彼女の態度に、ずきりと、胸の奥が軋む。
「……お疲れさまです、伊瀬さん。今戻ったんですか?」
「ああ、お疲れさま。部長は直帰だけどね、俺だけ仕方なく戻って来た」
「あはは、仕方なくですか」
俺の軽口にくすくす笑っている木下さんの横で、相変わらず佐久真は、うつむいている。
……これはもう、駄目だな。完全に、俺のこと拒否してる。