キミとの距離は1センチ
「じゃあ私は、ちょっと出てくるから。あなたたちは一休みしたら、勝手に帰ってていいよ」



テキパキと言い残して、保健師は医務室を出て行った。

ふたりきりになった室内が、とたんに静寂に包まれる。



「………」



……どうしたもんかな、この状況。

ちらりと、椅子におとなしく座っている佐久真へ視線を向ける。



「……よかったな、ケガなくて」

「………」



……また、だんまりか。

内心ため息をつきたい衝動を、腕を組んで天井の模様を見つめることで、なんとか堪える。


まあ、この反応は仕方ないか。それなりに人通りがある社内を、あんなふうに抱えられて歩いたんだから。

俺もあのときは頭に血ぃ昇ってたし、あまり気にしてなかったけど……今になって、ちょっとまずかったかなと思ってしまう。

……佐久真、俺のこと『嫌い』らしいしな。というか今現在彼女は宇野さんとのことでも、社内で密かに話題にされているというのに……さらにまたネタにされるようなこと、俺が進んでぶちまけてどうするんだ。
< 178 / 243 >

この作品をシェア

pagetop