キミとの距離は1センチ
「なんで、伊瀬……わたしなんかに、構うの?」

「……佐久真、」

「こないだわたし、ひどいこと、言ったじゃん……なのになんで、こ、こんなふうに、やさしく……っ、」



無理やりしぼり出していたみたいな、佐久真のたどたどしい言葉をさえぎって。

ポン、とできる限りやさしく、その頭に片手を乗せる。

そのまま彼女の前に跪いて、両頬を挟むように、手を添えた。



「おまえにひどいことをしたのは、俺だ」

「………」



ゆらゆらと、涙が浮かぶ佐久真の瞳。

あんなに逸らされていた視線が、今はしっかりと交わっている。

とても久しぶりに、こんなに近くで佐久真の顔を見られたことがうれしくて。自然と、口元に笑みが浮かんだ。



「……あの日、おまえの弱みにつけこんでおまえを抱いた。今さら許してもらおうとも、思ってない」

「……いせ……」



泣き虫なくせに強がりで、繊細なのに我慢ばっかりしてて。

がんばりすぎの佐久真は、いつもボロボロだ。
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