キミとの距離は1センチ
宇野さんは、知っていたのだろうか。そんな佐久真の、弱いところ。

たとえ、知っていたとしても……俺は宇野さんよりもっとずっと、彼女の弱い部分を見てきたと自負している。

佐久真はかわいい。そしてこんな佐久真の表情を、俺以外他の誰にも見せたくないと思う。

だけど彼女の泣き顔は、何度見ても、胸が締めつけられた。

親指の腹でそっと、彼女の目尻に溜まった涙を拭う。



「……泣くな、佐久真。おまえに泣かれるの、こたえるんだ」

「………」

「おまえが俺のことを、嫌いでも──……」



──ああ、そうだ。

伝えたいことは、たくさんあるけれど。

本当はずっと、この言葉を言いたかった。



「……俺はずっと、おまえのことがすきだったんだ」



届かないとわかっていて告げる想いは、切ない。

でも、後悔はなかった。


──もう、この気持ちを隠し続けていることの方が、辛いんだ。



「……え……」



一拍遅れて言葉の意味を理解したらしい佐久真が、驚いたように目を見開く。

両頬を俺の手に挟まれたまま、その顔がかあっと、赤く染まった。
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