キミとの距離は1センチ
「あたしが気付いたのはー……入社して3年目くらいの頃、いつもの同期8人でキャンプ行ったの覚えてる?」

「あー……」



あったあった、同期でキャンプ。

ちょっと遠出して、すっごい自然に囲まれてる、綺麗な川があるところに行ったんだよね。

キャンプの定番っぽくバーベキューやったんだけど、何か絶対バーベキューで焼かないようなものとか持って来てる人がいて、馬鹿みたいに笑った記憶がある。



「あのときさ、みんなでふざけて、川に入って遊んだじゃない。そうしたら珠綺がコケそうになって、だけどそれを、伊瀬くんが間一髪で助けてくれたの」

「……うん」

「そのときの伊瀬くんの反応見て、気付いたかな」

「………」



……たしかに、そんなことも、あったけど。

でもその出来事のことは覚えていても、あのとき伊瀬がどんな様子だったか、全然思い出せない。

……伊瀬はあのとき、どんな表情をしていたっけ?



「まあ、あくまであたしが気付いたとき、だからね。いつからすきなのかとかは、知らないけど」

「……そう……」



うなずいて、ぎゅうっとまた、クッションを抱きしめる。

……伊瀬は……いつから、わたしのことをすきでいてくれたんだろう。

というか、そのキャンプだって、もう3年ほど前の話だ。……もしかしてそれからずっと、すきでいてくれたの?
< 185 / 243 >

この作品をシェア

pagetop