キミとの距離は1センチ
入社してすぐ、バラバラの支社に配属されたわたしたちだけど。

わたしも伊瀬も都も、新入社員研修のときは、同じグループで研修を受けていた。

全体の人数で言えば、“同期”と呼べる人は50人ほどいるんだけど……そのときのメンバー8人が、みんなやたらと馬が合って。

それぞれが別々の支社で働き始めてからも、年に数回は、同期会という名目で集まりの場を設けていたのだ。


だから、入社4年目で同時に本社へと異動してくる前から、わたしと伊瀬はなんだかんだで、定期的に顔を合わせていた。……他の同期たちも、一緒ではあったけれど。

……伊瀬、わかりやすかった? わたし全然、思い当たるふしがないんだけど……。


コト、と小さく音をたてて、都がテーブルの上にグラスを置いた。

さっきまでよりちょっとだけ、彼女が心配そうな表情で、わたしの顔を覗き込んでくる。



「……ていうかさ、少し前……珠綺と宇野さんが別れたあたりから、あんたと伊瀬くんって雰囲気微妙だったらしいじゃん。あたしそれ聞いた時点で、伊瀬くんがとうとう珠綺に告ったんだと思ってたよ」

「──、」

「それって、結局なんだったの?」
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