キミとの距離は1センチ
……待って、待って待って。

伊瀬が、わたしのことをすきだったとすれば。


──あの、雨の日。

一体彼は、どんな気持ちで、いたんだろう。



《ちょうどいいや。俺も最近、振られたばかりなんだ》



あのとき伊瀬は、確かにそう言っていた。

振られたばかり、って……わたしそんな、伊瀬に『振られた』って思わせるようなこと、してないよね?

仮にその『振られた』相手が、わたし以外の誰かだとすれば……そもそも、こないだわたしにした告白はなんだったの?っていう話になる。



「(……でも、)」



あのときの、伊瀬は……今思い返してみると、なんだかとても辛そうなカオをしていて。

泣くな、って言いながら、わたしの涙を拭ってくれた。目尻をなぞる指先はとてもあたたかくて、少なくともあのときのわたしには、その手はとてもやさしいものに感じられた。

彼はあの日、どんな気持ちで、わたしに触れたのかな。

わたしが、宇野さんと付き合い始めたと知ったときは──……どんなふうに、感じていたのかな。

だけどそれは、わたしに対する告白が嘘だとすれば、彼にとってはなんでもないことのはずで。


……ああもう、考えれば考えるほど、わけわかんなくなる……!
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