キミとの距離は1センチ
パンプスのつま先に視線を落としながら、無意識に苦笑がもれる。

そうして再び、目の前の人物へと顔を向けた。



「……ありがと、伊瀬。やっぱり伊瀬は、頼りになる」



言いながら、照れくさくなって思わずはにかんでしまう。

彼はそんなわたしを、驚いたように表情を固まらせて見つめていたけれど。

やがてふっと、大きく息を吐いた。



「……別に、いいよ。佐久真の大雑把は、今に始まったことじゃないし」

「うっ、耳が痛い……」

「次からは気をつけろよ。そんな毎回、俺だっておまえのことフォローできるわけじゃないんだから」

「……はい。心得ときます」



素直なわたしの返事に、伊瀬が薄く笑んでうなずく。

そのまま、彼は歩き出すのかと思っていたけれど……予想に反して、伊瀬は何かためらうように、1度視線を床に落とした。



「……?」



わたしが、疑問を口にするより先に。

顔をあげた彼と、また視線が交わる。
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