キミとの距離は1センチ

+゚:11/ トリックスターの種明かし



+゚:11




──伊瀬のことが、すき。

そんな、自分の気持ちに気付いてしまって。

それでもわたしは、彼に対して何もできずにいた。



『ちょっと珠綺、どんだけ奥手なのよアンタ。さっさと告んないと、あのゆるふわモテガールに伊瀬くんとられちゃうわよ』

「だ、だって……」



電話越しの呆れたような都の声が、もともと弱っている心にグサリと刺さる。

わたしはベッドの上で体育座りしながら、ぎゅうっと強くクッションを抱きしめた。



「あのふたり、もう付き合ってるかもしれないし……今さらわたしが告白したって、」

『その考えが奥手だってのよ! すきなら奪え!! 以上!!!』

「………」



さなえちゃんの告白を偶然目撃してしまい、伊瀬に対する自分の気持ちを自覚してから、数日。

都は毎晩、こうして電話をかけてきては、行動を起こせないわたしにお説教をかましている。


まあ、わたしのことを考えてしてくれているわけだし、ありがたいんだけどさ。

……ありがたいんだけど……ちょっと、コワイです。
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