キミとの距離は1センチ
「……あの、というか……」
「ん?」
思いきって、私はずっと気になっていたことを口にした。
「私が、告白したとき……珠綺さん、近くで聞いてたと思うんですけど。私が振られたの、知らなかったんですかね?」
「え?!」
なぜか青木さんが、驚いたように目を見開く。
え、あの……何かまずいこと、言ったかな?
「木下さん、珠綺が近くにいたこと知ってたの?!」
「あ、はい……曲がり角から、こっち覗いてるの見えたので」
さすがあの子、詰めが甘いわ……なんて言いながら、青木さんが遠い目をする。
「じゃあ木下さんは、珠綺がいるの知ってて、告白したんだ? 勇気あるな~」
「……そんなんじゃ、ないですよ。私が振られることで、背中を押したかったというか……珠綺さんも、最近明らかに伊瀬さんのこと気にしてたので。もういっそ、早くくっついて欲しかったんですよね」
「……木下さん、いい子いい子」
そう言いながら、なぜか青木さんは私の頭を撫でてくれた。
うれしい、けど……なんかこれ、考えてみればすごい状況だよね。
一応私たち、今日初めて話した気がするんだけど。