キミとの距離は1センチ
わたしの肩にひたいをこすりつけて、伊瀬が深く、息を吐く。



「……やっと、届いた」



低くかすれたそのつぶやきを聞いた瞬間、わたしの胸に熱いものがこみ上げてきて。

じわりと瞳が潤むのを感じながら、ためらいがちに伊瀬のシャツの背中を掴んだ。



「う、うそだあ」

「は? なんで嘘なんだよ」



わたしの肩口から顔を上げた伊瀬が、訳がわからないという顔をする。

そんな彼を見つめて、すん、と、鼻をすすった。



「さ、さなえちゃんは? 付き合ってるんでしょ?」

「付き合ってないけど。何それ、何がどうなってそうなったんだよ」

「え、だ、だって……」



抱きしめられた体勢のまま、ぽつぽつと、わたしはビアガーデンの日に見た一部始終を話す。

最後まで聞き終えた彼は、やっぱり呆れたようにため息をついた。



「まあ、木下さんに告白されたのは本当だけど……その後俺、ちゃんと断ったからな。おまえは聞いてなかったみたいだけど」

「そ、そうなの……?」

「本当に佐久真は、そそっかしいな。……つーか、そんなすぐ、他の奴と付き合ったりできるわけないだろ」



不機嫌そうに、伊瀬がわたしの頬を撫でる。



「……俺はずっと、おまえのことだけ見てたんだから」

「……ッ、」
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