キミとの距離は1センチ
まっすぐ視線を合わせながら言われて、かあっと、顔が熱くなった。

な、なにこれ、恥ずかしい。

伊瀬の顔なんて、見慣れてるはずなのに。距離が近いだけで、こんなにも、恥ずかしい。


思わず顔を逸らそうとすると、それを許すまいとするように、あごを掴まれてまた彼の方を向かせられた。



「それから……なんかおまえ、グダグダ言ってたけど。佐久真が強くないことなんて、そんなの、俺はとっくの昔に知ってる」

「……、」



簡単にそんなことを言われて、息を飲む。

指先でわたしの頬を撫でながら、彼は続けた。



「おまえがほんとは繊細で傷つきやすいことも、実は泣き虫なことも、」

「………」

「結構少女趣味で、こっそり目立たないように猫のキャラクター物のボールペン使ってることも知ってるし」



誰にも気付かれていないと思っていたことを言い当てられて、照れ隠しについ睨む。

そんなわたしをいとおしそうに見つめて、伊瀬が微笑んだ。



「……初めてちゃんと、話した日。俺の腕の中で小さくなりながら、今にも泣き出しそうに『ありがとう』って俺に言ってくれたときから、」


「佐久真は俺の中で、ずっとかわいくて守りたい、“女の子”だったよ」
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