キミとの距離は1センチ
+゚:2/ すれ違いディスタンス
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12階にあるオフィスの窓から、雲ひとつない青空が見える。
会社にこもって仕事をしてるのが馬鹿らしくなるくらいの快晴を横目に、わたしはデスクであくびを噛み殺した。
そのタイミングで上司に名前を呼ばれたから、一瞬ドキリとして。あわてて返事をしながら椅子から立ち上がった。
「何でしょう、近藤課長」
「うん。こないだの『和み姫』の企画書、読ませてもらったんだけど」
その言葉に、今度はまた別の意味でドキリとする。
課長のデスクの前で姿勢を正すと、次のせりふを待った。
すっと目の前に、わたしが提出した企画書が差し出される。
「なかなかよかったよ。……よかったんだけどね、うん。あともう1歩かなあ」
苦笑混じりの課長に、内心がっくり、わたしはうなだれる。
「そうですか……自分ではよくできたかなって思ったんですけど」
「うん、企画自体は悪くはないんだよ。ただ説得力というか、“どうして『ブルーバードの和み姫』じゃないとならないのか”っていう部分がちょっと弱いかな。もう少し、そこ突き詰めてみて」
「……はい。ありがとうございました」
言いながら企画書を受け取り、ぺこりと頭を下げた。
デスクへ戻り際、先輩男性社員が伊瀬を呼ぶ声が耳に届く。