キミとの距離は1センチ
「ぅ、や……っ」

「嫌? 『イイ』の間違いだろ」



普段はやさしくしてくれるのに、こんなときばっかり意地悪。

妖しく口角を上げながら、伊瀬のゴツゴツした手がわたしの服のボタンを開けていく。

こうなったら、もう、抵抗するだけ彼をよろこばせるだけだ。

おとなしくなったわたしを見て、伊瀬が「いい子」とひたいにキスを落とす。


そしてそのまま、わたしのそれに自分のくちびるを寄せたけれど──重なる1センチ手前で、ぴたりとその動きが止まった。



「……昴? どうしたの?」

「いや……」



息がかかりそうなほどの距離で、イタズラっぽく彼が笑う。



「1センチって、めちゃくちゃ近いなって思って」

「──、」



……ああ、そうだね。

この1センチが、あんなに遠く感じたこともあったのに──今はこんなに近くにあるなんて、不思議だ。


きっと、もう、見失うことはない。

わたしの一等星は、きみ。何度でも手を伸ばして、何度でも、捕まえるから。




「珠綺、すきだ。あいしてる」

「……わたしも、あいしてる」




あなたとわたしの身長差は、1センチ。


今日はわたしから近付いて、その距離をゼロにした。










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