キミとの距離は1センチ
+゚:1/ “若”と珠綺
+゚:1
昔から、「珠綺ちゃんは背が大きいねぇ」って、言われてきた。
身長が伸びてしまうのは、自然現象なわけで。いくら伸びるな縮めと念じてみたところで、自分ではどうにもならないわけで。
そしてその何気ないまわりの人たちの言葉が、コンプレックスになっていた時期もあったけれど。
“いい大人”と言われる年齢になった今、自分の外見のことなんてとっくに吹っ切れていたわたしは、なーんの劣等感も羞恥心もなく、この身長と付き合っている。
そんな、27歳の夏のはじまり。
「──えっ、珠綺さんって、身長168センチなんですか?」
朝の清々しい空気がただようオフィスに、なんともかわいらしい声が響く。
当の本人は思いがけず自分の声が響いたことに赤面し、はっとその口を両手でおさえた。
その仕草をかわいいなあ、と思いながら、わたしは隣りの席でオバサンよろしく片手を振ってあははと笑ってみせる。
「そー、中途半端でしょ? どーせなら170欲しいわ」
「いえそんな……スタイル良くて、うらやましいです」
「いやいや。さなえちゃんみたいにちっちゃい子の方が、かわいくて得だって」