キミとの距離は1センチ
紙コップを持ったままわたしたちにペコリとお辞儀をして、さなえちゃんは踵を返した。

遠ざかるその背中を見つめる伊瀬の横顔に、わたしはなんとなーくピンと来て。

ツンツン、またその肩をつついた。



「伊瀬、もしかして……さなえちゃんのこと、狙ってる?」

「はあああ~?!」



にやにや笑みを浮かべるわたしを、勢いよく伊瀬が振り返る。

な、なに、その反応。

こっちがちょっとびっくりするくらいの大声に、思わず少しだけ身を引いた。



「え、だって伊瀬、お昼もさなえちゃんのことかばってたし……気に入ってなきゃ、あんなことできないでしょ?」

「………」

「ていうかふたり、結構お似合いだと思う、けど……」

「………」



ビシバシ、伊瀬の無言の圧力を感じる。

予想外の反応をされてなんだかバツが悪くなりつつ、最後は消え入るようにぼそぼそ伝えると。

彼は口を半開きにして、信じられないものを見るような目つきでこちらを凝視していた。
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