キミとの距離は1センチ
+゚:3/ 若心、彼女知らず
+゚:3
《……ありがとう、伊瀬くん……》
あのときから ずっと
俺の中で 彼女だけが特別だった。
◇
……ああ、疲れた。
凝った右肩を左手で揉みながら、自然とため息が漏れる。
やっぱり俺、メガネの方が合ってんのかな。コンタクトにしてから、肩こりひどくなった気がする。
オフィスを抜けて向かうのは、この階にある自販機だ。俺が好きな、紙コップで出てくるタイプのミル挽きコーヒーのが置いてあるから、いつも利用している。
あと数メートルでたどり着くというところで、ふと視線を上げると。
見知った人物の姿に気付き、目を瞬かせた。
「……木下さん?」
「っあ、伊瀬さん……! お疲れさま、です」
「うん、お疲れ」
自販機横のベンチに座ってぼんやりしていたのは、先ほどオフィスを出たはずの木下さんだった。
きっと、帰宅前にひと息入れていこうと思ったのだろう。その手の中には、カフェオレのようなものが入った紙コップが握られている。