キミとの距離は1センチ
ノリ突っ込みをする佐久真に、やはり西川さんはおかしそうに笑う。



「あっはっは、だっておまえ、背もあるし男友達といる感覚なんだよな～」

「え～……西川さんの友達はやだなぁ～……」

「おいおまえ、どういうことだよそれは！！」

「そのまんまの意味ですぅ～～」

「なんだとコラー！」

「………」



わいわいやり取りをするふたりを前に、内心の苛立ちを隠そうと俺は必死だ。

己を落ち着かせるために息を吐いて、ちょうどできた会話のすき間に「あの、」と声を挟む。



「俺やっぱり、合コンは行きません。他の人をあたってください」

「えー、やっぱ若殿はダメかあ」

「はい。せっかくですけど──、」

「……なんで？」



きっちり断りを入れようとしていた俺の言葉をさえぎって、会話に割り込んできたのは佐久真の声だ。

見ると、本当に不思議そうな表情で、俺の顔を覗き込んでいて。



「伊瀬、付き合ってる人いないじゃん。お試しにでも、行ってみればいいのに」

「お、言ってやって佐久真っち！」

「──、」



いたって軽い調子で話す佐久真に、西川さんが乗っかる。

俺はというと、とっさに言葉を返すこともできずに……ただ硬直したまま、彼女の顔を見つめるだけ。
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