キミとの距離は1センチ
と、そこで。



「おーい、そこの3人~」



そう言ってひょっこり輪の中に加わったのは、ふたつ歳上の内川さんだ。

彼女は何やらメモ帳とボールペンを持って、わたしたちの顔を見回す。



「今あたし、ビアガーデンの打ち上げに使う店決めのアンケートとってんの。協力してー」

「え、ビアガーデンってあと2ヶ月先ですよね?」

「人数多いから、早めに抑えときたくてさ~。今からリサーチ。きみたちは何食べたい?」



この会社は毎年8月の初めに、取引先の人を招待してのビアガーデンを行う。本社ビルの屋上を開放し、そこでお酒やソフトドリンク、軽食などを振る舞うのだ。

その企画・運営は、我がマーケティング部の仕事で。わたしは今年異動してきたばかりだから、まだ経験したことはないんだけど……なかなか大変だと、前に伊瀬がこぼしてたっけ。



「あらー、お疲れさまです。わたし基本好き嫌いないですけど、焼き鳥おいしいとこがいいです」

「えーっと、焼き鳥ね。やっぱり佐久真はおっさんくさいなあ」

「むぅ。おいしいじゃないですか~、焼き鳥」

「ハイハイ」
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