キミとの距離は1センチ
+゚:5/ ウォーターパークの思惑
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『間もなく4番線に、立倉行きの電車が参ります。ご乗車の方は白線の内側に立って──』
そんなアナウンスが流れて十数秒後、背後にある4番線に電車が滑り込んで来た。
電光掲示板を見たら、自分が乗る電車の到着時刻はあと5分後だ。
わたしはちらりと、隣りに立つ人物を見上げた。
「わたし実は、『ウォーターパーク』って量営部の仕事で行ったことしかないんですよ~」
「あ、そうなんだ? まあ俺も、ここしばらくは仕事でしか行ってないかな」
笑みを浮かべてそう返してくれたのは、わたしより頭1個分高い位置に顔がある宇野さんだ。
すると今度はわたしの反対隣りから、かわいらしい声が会話に混じってくる。
「実は……私も、今まで行ったことないんです」
「あ、さなえちゃんも? 一緒だー」
はい、とうなずくさなえちゃんの向こう側、腕を組んで立っている人物と顔を合わせるために、ひょい、と上半身を前に倒した。
「伊瀬は?」
「……俺も。行ったことはない」
「あはは。意外と行かないもんだよね」
4人中、3人は行ったことなしか。
そんな結果に、宇野さんが苦笑した。
「なんだ、ウチのお得意さまだってのにみんな薄情だなー」
6月最後の日曜日。現在時刻は午後1時半。
なぜこの異色メンバー4人が、ブルーバード本社最寄り駅のホームに立っているのかというと。
──話は、数日前にさかのぼる。