キミとの距離は1センチ
「『霞ヶ岡ウォーターパーク』、ですか?」
『うん、そう』
電話口の宇野さんが、言いながらふわりと笑う気配がする。
わたしは右手に持っていたスマホを左手に持ち替えて、ぼすんとベッドに腰をおろした。
「ウォーターパークといえば、宇野さんとよく営業に出かけましたね。なんだかもう懐かしいなあ」
『ふふ、そうだね。今も、担当してくれるのは川上チーフだよ。相変わらず元気』
「あはは。わたしあの人と話すの好きでした」
『霞ヶ岡ウォーターパーク』は、ブルーバードからわりと近い場所にある大型屋内温水アミューズメント施設だ。
温水だから1年中やっているし、自分の知り合いも、プールで遊んだという話を聞けばそこの名前を挙げていたように思う。
『こないだ偶然、外でその川上チーフに会ってさ。話の流れで、今度会社の奴らと一緒に行きます、的なこと言っちゃったんだよね』
「おお、そうなんですね」
『うん。まあ、あそこにはいつもお世話になってるし。もしよかったら今週の日曜日、珠綺ちゃん一緒に行ってくれないかなって』