キミとの距離は1センチ
くちびるをとがらせるわたしを軽くあしらって、次に内川さんは「木下ちゃんは?」とメモ帳から顔をあげた。
「えっと、私も好き嫌いはあまりなくて……強いて言うなら、パスタとかピザとか、好きです」
「はいよ、イタリアンね。さっすが木下ちゃんは女子っぽーい。佐久真とは大違ーい」
「そこ、ひとこと余計ですよ!」
わたしのつっこみは盛大にスルーし、彼女が最後に視線を向けたのは伊瀬だ。
「“若”は?」
「そうですね……」
つぶやいて、話を振られた伊瀬は考えるようにあごに手をあてた。
『若』っていうのは、社内での伊瀬のあだ名だ。先輩方評価の「和服が似合いそう!」っていう勝手な感想から、この部署への異動当初より浸透しているらしい。
ちなみにこのあだ名、最初こそ伊瀬も嫌がってはいたものの、今はこの通りすっかり受け入れてしまっている。
バイタリティが高いここの先輩たちには自身のささやかな抵抗なんて何の意味もなく、ただ自分が無駄に疲れるだけだと早々に悟ったようだ。
「えっと、私も好き嫌いはあまりなくて……強いて言うなら、パスタとかピザとか、好きです」
「はいよ、イタリアンね。さっすが木下ちゃんは女子っぽーい。佐久真とは大違ーい」
「そこ、ひとこと余計ですよ!」
わたしのつっこみは盛大にスルーし、彼女が最後に視線を向けたのは伊瀬だ。
「“若”は?」
「そうですね……」
つぶやいて、話を振られた伊瀬は考えるようにあごに手をあてた。
『若』っていうのは、社内での伊瀬のあだ名だ。先輩方評価の「和服が似合いそう!」っていう勝手な感想から、この部署への異動当初より浸透しているらしい。
ちなみにこのあだ名、最初こそ伊瀬も嫌がってはいたものの、今はこの通りすっかり受け入れてしまっている。
バイタリティが高いここの先輩たちには自身のささやかな抵抗なんて何の意味もなく、ただ自分が無駄に疲れるだけだと早々に悟ったようだ。