キミとの距離は1センチ
準備が済んで、わたしたちは更衣室を出る。

プールエリアに足を踏み入れてすぐのところに、男性メンバーふたりは立っていた。

こちらに気付いて、宇野さんが片手を挙げる。



「やっぱりいいねー、水着って。ふたりともかわいいよ」



にっこり、微笑みながら宇野さんに言われ、わたしとさなえちゃんは顔を見合わせてつい笑ってから、お礼を言った。

うーん、宇野さんが言うと、全然いやらしく聞こえないんだよね。イケメンで雰囲気がさわやかだと、すべてに置いてお得だと思います。


相変わらずの真顔で立っている伊瀬を、つんつんとひじでつつく。



「どーよ伊瀬、なんか言うことないの?」

「……いいんじゃない?」

「ふふん、まあそれでいーか」



ものすっごい面倒くさそうな顔しながらだったけど、とりあえずお褒めの言葉はもらったので満足する。

だけどその後、自然な笑顔で「木下さん、白いの似合うね」なんてさなえちゃんに話しているのを聞いて、すかさずその脇腹にパンチをくらわせた。

うらみがましそうな目で睨まれるけれど、わたしはつーんとそっぽを向く。

気持ちはわかるけど、なんとなくムカついたんだもん。
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