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・大介の場合
駅前に、小さな映画館がある。
客席数も150席くらいの、昔は仁侠映画を上映していて、春休みや夏休みには子供のアニメ祭りをやるような。実際、やってるんだけど。
オーナーが変わってからは仁侠映画ではなく、封切の最新の邦画も流すようになったし、昔はどこの映画館でもそうだったように懐かしい名作を3本立てで流したりしていた。
その小さな映画館で、アルバイトをしている。今年で2年目。
今は吉永小百合主演の懐かしい映画を一日に6回流しているので、それを毎日観ている俺はセリフも完璧に覚えてしまっていた。
「大介君、これ頼める?」
券を販売するもぎりの席に座る俺を妙子さんが後ろの事務所から呼ぶ。
「はい」
俺は返事をして事務所に入る。
「次のチラシ。また商店街において貰って」
500枚くらいづつ束になった次の上演作品のチラシをダンボールで受け取った。ずしりと重みがかかって一瞬よろける。
妙子さんは面白そうにそれを見て、あはははと笑った。
「ファイト、大学生!」
「・・・・うす」
もぎり席の下にそのダンボールを置いて、俺はさっきの仕事に戻る。
今の回に入ったお客は34人。この小さな映画館では1回の上映で客数ゼロも普通にあるから、この回は大入りに入る。
さすが、吉永小百合。
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