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 暇で暇で暇な大学の講義中、円形教室の一番後ろの席に座って、ぼーっと窓の外を見ていた。

 一夏中強烈な太陽にさらされたままだった樹木が、残った力を振り絞って立っているように見えた。

 もう夏も終わりで、そろそろ雨が降るだろう。そうしたら、判りやすいくらいにハッキリとあの緑は生き返るんだろうな、などとつらつら考えていた。

 この9月が終われば、同級生は就職活動に入りだす。

 俺はそれをいつでも人事みたいに眺めているだけだけど。


 昨日はバイトは休みだった。

 朝から夕方まで一応大学に行って、ほとんど参加実績のないサークルの飲み会に強制的に参加させられた。

 同じ3回生だけどサークルで顔を見かけるだけだった女子の恋愛相談に乗っていた。

 ――――――いや、違うか。

 あれは相談とは言えない。向こうが一方的にベラベラ喋るのを、俺はたまに相槌を打って聞いていただけだ。

 他にやることもないし話す相手もいなかったから、隣に座った子の話を聞いていただけ。

 かなり惚れている男がいるが、どれだけアプローチしても振り向いてくれない、とか何とか言っていた。

 ジュースみたいな甘ったるいカクテル2杯で酔っ払って、目を潤ませながら色々話していた。

「どうしたらいいと思う!?」

 っていきなり聞かれて戸惑った。

「・・・好きでいるのが辛いなら止めれば」

 そう言うと、違うの!と激しく首を振った。

「好きでいるのは楽しい。でも手が届かない感じが悲しい。応えてくれなくて、でも優しくされるのが、もどかしい」

「――――――・・・そりゃあ、まあ、お客さんには冷たくはしないよな」


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