10%


 俺はぬるくなったジョッキを持ったままで彼女を見ていた。

 ・・・・・どうしたらこんなに強い想いがもてるんだろう。赤の他人に。

 同僚や、友達なんかじゃない。言ってみれば外面しか知らない男に対して。

 何で、こんなに強く、好きだと思えるんだろう――――――――


 俺がじっと見たままなのに気付いて、パッと顔を上げた。

「・・・呆れてるんでしょ。しつこい女だなーって思ったでしょう!」

 まだ何も言ってないのに、勝手に怒って膨れていた。


 たらたらと教授の声が続いていく。

 俺は頬杖をついてやっぱりぼーっとしていた。

 ・・・・人を好きになるって、結構ミラクルなことだよな・・・。

 昨日の、名前も思い出せない子、どうなるんだろ・・・。


 パッと頭に妙子さんが浮かんだけど、目をきつく閉じて追い払った。

 俺は、不毛な恋なんて嫌だ。

 人のものに手を出すなんて馬鹿げてる。

 俺は、俺は―――――――――



 Tシャツを無意識に握り締めた。



 この10%を、失くしてみせる。





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