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・芽衣の場合
始まりは、何てことない休日からだった。
歳の離れた従妹が遊びに来たから、繁華街に連れて行くのもなあ~と思って、久々に水族館に行ったのだ。入場料も安いし、時間も潰せて素敵、と思って。
「芽衣ちゃーん、はよう」
従妹の雅(みやび)は12歳。小学校の6年生で、何とすでにあたしよりも背が高い。
大阪弁でとにかくひたすら喋りながら歩いていく。まるで一人ラジオだ。
あたしは現役大学生。就活を控えた3回生で、名前は岡本芽衣と言う。
「はーい、ちょっと待って、今日ヒールが高めで・・」
よろよろと後ろから付いて行くと、水族館行くのにヒールなんてありえへん!何かんがえてんの~と文句の突っ込みがきた。
・・・・まあ、確かに。すみません。
「だって新しく買ったの、履きたかったんだもん。可愛いでしょ、これ?」
ウェッジソールのひも付きサンダルを片足を浮かせてぶらぶらしてみせる。
雅は地団駄踏んで暴れだした。
「どうでもいいっちゅーの!はよ来てぇーやあ!!」
はいはい。判りました。出来る限りの早歩きで雅に追いつくべく努力した。
市民割引がきいて安く入れた水族館は、懐かしくて、しかも新しい世界だった。
目の前一面に広がる大水槽に圧倒される。
都会に出てきたおのぼりさんみたいにあんぐりと口を開けたままで上まで仰ぎ見る。
浦島太郎の歌が出てきちゃった・・・。エイやヒラメが舞い踊りって、あれ。まさしくあんな感じだ。