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・芽衣のその後
Tシャツ一枚じゃ涼しく感じるようになった最近、あたしはまた水族館へ向かう。
確かに、今では井上さんだけが目的ではくなるくらいに水族館そのものが好きになってはいた。
だけど、最優先事項のあの人の笑顔を見に、またイルカのプールへ向かう。
ショーはもう終わってるけど、会えるかも、と思って。
人が入らないように張ってある縄の向こうで、イルカと話している彼を見れることがあった。
それをこっそり眺めるのも好きだった。
だから今日もいつもの場所で覗いたのだ。気軽に、ひょいって。
すると、プールサイドには女の子のドルフィントレーナーがいた。
手をイルカに差し伸べて、優しい顔で言葉を出している。たまに笑ったりして、ほとんど水に濡れていたけど、楽しそうだった。
・・・あまり見たことない子だなあ~・・・新しく来たのかな?
楽しそうにイルカと会話しているようだったから、あたしまで嬉しくなってきた。
何か、素敵な光景。
そう思って、ふわふわの気持ちのまま、背伸びしてみていた。
すると後ろから肩を叩かれて、ビックリした。
「うひゃあ!?」
思わず叫ぶ。
振り返ると。彼が立っていた。あたしの声に驚いたようで体が少し後ろに傾いていた。
「・・・すみません、驚かせたね」
「あ・・・井上さん!」