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さっき言いかけた言葉が喉のところで引っかかって息が少し苦しい。
あの声と、あの表情・・・井上さん、あたし無理な時が来た?
思わず言いかけた、「無理、かも」は言わずに飲み込んだけど。
波音は続く。あたしは夕焼けの中、一人で途方にくれていた。
―――――――無理、かもしれない。・・・・あの声の感じ・・・あたしはあの人を諦めなきゃいけないのかもしれない・・・。
連日で潮風に当たっているあたしの髪も焼けてきている。べたべたした髪の毛が顔に当たって、くくっと泣きそうになった。
でもでもでも、まだ。
まだだ。
1時間ほどそこに座り込んでいて、ようやく立ち上がった。
そして家に帰った。
「ああ、あの明るい人ね、直接関係ないから名前は忘れちゃったけど、可愛い人よね。どうして?」
2日後に来た水族館で、売店前の椅子に座って掃除のアルバイトをしている多田さんて女の人と話していた。
ここに通うようになってから最初に仲良くなった人で、水族館の色々なスポットを教えてくれたりした人だ。
あたしは通りかかった彼女を捕まえて、一昨日見かけた女性のドルフィントレーナーについて質問していた。
「・・・・多田さあん・・・井上さん、彼女の事が好きなのかも・・・」
凹みながら口にする。あああ・・・やっぱり、改めて口にすると本当に凹むわ・・・。
困った顔で少し笑って、多田さんは言った。
「・・・それはあるかもね。何せ視察の間はほとんど行動をともにするでしょうし、ドルフィントレーナーは時間が変則で一般の人と付き合うのは無理でしょうしね」