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「やっぱりですか・・・」
テーブルに突っ伏してうだうだ言っていると、そんなにガッカリしないのって肩を叩かれた。
「大学に気になる子いないの?何もわざわざ手に入れにくい年上の人を狙わなくても」
「・・・・だって、一目ぼれなんです~・・」
「その内目が覚めるわよって言いたいけど、こればかりはね~。もう一回告白してみてやっぱり無理そうだったら諦めたら?」
あたしは多田さんをちろりと見上げた。
「・・・・一目ぼれって成就しないものなんですか?」
立ったままで箒に顎をのせて首を捻った。
「そういうわけじゃあないと思うけど、一目ぼれするシチュエーションって元々接点がない人に対してが多いと思うのよね・・・。そりゃあ同級生とか、バイト先の人、とかのほうが実りやすいんじゃない?」
ぐさ。・・・・そうかあ・・・そうだよねえ~・・・。
ううーん・・・と唸っていたら、それじゃあ私は仕事に戻るわね~と手を振って行ってしまった。
井上さんは今日は休みらしいから、あたしもここでうだうだしていても仕方がない。
ため息をついて立ち上がった。
売店の女の子に手を振る。そしていつもみたいに、海岸側の出口から海へ出た。
今日は昼までで大学は終わってたから、まだ時間も3時過ぎ。
夕焼けでない海を眺めるのは久しぶりだ~と伸びをしながら周囲を見回して、ハッとした。
夏には海の家が出来るあたりに座ってるのって・・・・井上さん!?
遠くて距離もあったけど、彼の姿なら絶対判る自信がある。