10%


 全身が痛くて叫びだしそうだった。

 7センチのヒールも、少しでも大人っぽくなれるかと瞼につけたゴールドのパウダーも、ポケットの中で揺れる年間パスの角が膝に当たるのも、毎回凄く悩んで決めた全身のコーディネートも。

 井上さんの為の全部、全部、全部が。

 あたしと一緒に泣いているみたいだった。


 ・・・この10%は、それ以上大きくなることはないんだな。彼の心は彼女のもとへ向かっている。あたしはバカでおっちょこちょいだけど、それ位は判る。

 だって、あんな顔見たことないもん。

 随分経って、足が痺れてきた。

 しゃがみ込んだまま、ぐちゃぐちゃになった顔をハンドタオルで乱暴にぬぐった。

 鏡を出して見てみると、もう悲惨と言っていい顔のあたしがうつっていた。

 大人ぶって作った顔のあたし、結果は散々で、結局いつものスッピンに逆戻り。

 こんな顔でバスに乗れない・・・・。

 ため息をついて、唇をかみ締めた。そして、トイレを探して歩き出した。



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