10%
あたしは首をかしげた。
「でも、名簿貰ったでしょ?」
「――――――顔と名前が一致しない」
真面目な顔でそんなことを言うから、思わず笑ってしまった。
あたしが、今目の前に座る佐藤君のゼミまで知っているのはちゃんと訳があるんだけどねー。
サークルに入りたての1回生の頃、あたしをそこへ引っ張り込んだ友達の真奈美が、一時佐藤君の事を気に入っていたのだ。
ただ近づこうにも彼が全然サークルに来ないのでどうしようもなく、その内に2つ年上の先輩と付き合いだしてしまった。
それでも同学年とあって情報はチェックしていたようで、たまにあたしに彼の話をしていたのだ。うろ覚えだったけど、学部もゼミも合ってたみたい。
たまに先輩に強制されたかして佐藤君がサークルに来ていても、大体静かに皆に混じっていた。
地味ではないが目立ちもしない佐藤君は、『ちょっと不思議君』だったのだ。
今だって、自分から来たくせに後は黙々とご飯を食べている。
あたしは先に食べ終わり、所在がなくて少し困った。
箸を置いて一息ついた佐藤君が、静かな声であたしに言った。
「・・・明日の飲み会、行く?」
あたしは瞬きをした。まさか、そんなこと聞かれるとは。
「行くよ。佐藤君も来るの?」
聞くと頷いたから、珍しいね~とつい言ってしまった。