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判らなくてあたしが聞き返すと、彼はうっすらと笑ってあたしを見た。
「・・・人妻なんだ、相手が」
――――――え、マジで???
あたしは一瞬真顔になった、と思う。
何よ、それ?いきなり昼メロの世界なの???佐藤君が、人妻に恋を??
そのあたしの反応を見て可笑しかったらしく、彼が今度こそ声を出して笑った。
「バイト先の人。だから、辞めたんだ、先週」
「・・・・あ、成る程」
何となく判った。本気で好きになる前に、そこから、彼女の前から自分を消したんだなって。
学食を見回しながら、ゆっくりと佐藤君が言った。
「それが必要な努力だと思ったんだ。これ以上、恋心を育てちゃダメだって」
騒がしい学食で、彼の声は静かだったけど、ちゃんと聞こえた。
「・・・今ならまだ、戻れるって」
あたしは黙って前の男の子を見詰める。
皆、色々あるんだなあ・・・・。あたしは年上に一目ぼれをして、彼はバイト先の人妻に惹かれつつあった。
どっちも、結果的には叶わなかったけど。
「・・・難しいよねえ・・・恋愛って。皆、どうして恋人が作れるんだろ・・。簡単に作ってるように見えるんだけど、本当に好きなのかな・・・」
あたしは独り言のつもりだったけど、彼が前で頷いていた。