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「・・・何か、大変だったけど・・。でもその良さも判ったかも、とは思う。誰かのことを思って、寝付けない、とか・・・」

「え?!寝付けなかったの!?結構真剣だったんじゃん、佐藤君!」

 あたしが前のめりになって言うと、いや、と彼は手を振った。

「俺はそこまでいかなかった」

 ・・・何だ、とあたしは脱力する。

 佐藤君は、本当に好きが深くなる前に身を引いたんだろうな。あの人が気になるってレベルで。

 あたしはため息をついた。

 告白・・・ちゃんとするべきだったのかなあ・・・。

 井上さんの笑顔が浮かんで、またぐぐっとなる。

 ああ、ヤバイ。泣きそうだ。

「・・・佐藤君、ごめん。あたし泣きそうだから、もう行くね」

 え、と彼は驚いた顔をしたけど、別に慌てもせず、うん、とすぐ頷いた。

「・・・思い出させて、悪かった」

「いいの。話すことで、やっぱり無理だったんだって判ったから」

 あたしは唇をかみ締めた状態で、彼の顔は見ずにお皿を載せたトレーを持ち上げた。

「じゃあ、また明日ね」

「ああ、明日」

 ひらりと手を振って、佐藤君はあたしを見ていた。何とか笑って、あたしは退散する。

 どこか人気のない校舎の屋上でも行こう。そしてまた、ちょっとだけ泣いて元気を出そう。

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