10%
冴えない表情の妙子さんが立っていた。俺の驚きが大きかったのが面白かったらしく、口元は笑っていたけど。
両手を合わせて、ごめん、驚かしてしまったね、と言った。
その声も小さかった。
「・・・ああ・・・本気でびっくりした。どうしたんすか?」
まだドキドキ言っている胸を押さえて俺が聞くと、何といきなり泣き出した。
「――――――・・・えーっと、何事ですか?大丈夫ですか?」
目の前に立った妙子さんは、ごめんね~と言いながらぼろぼろと泣いていた。
俺はモップを脇において、困って立ち尽くす。
・・・何で泣いてんの、この人。俺、どうしたらいいんだろ・・・。
「・・・だっ・・・ダンナと喧嘩したの。家を飛び出して来ちゃって、ここなら一人になれるかと・・・思って・・・まだ、大介君が、いる、と、は・・・思わなくて・・・」
泣きながら言うから判読に苦労した。
でもとりあえず、一人になりたくてここにきたらしいって事は判った。
しゃくりあげながら言う妙子さんを、とりあえずソファーに誘導した。
「・・・・俺、消えたほうがいいですか?」
ぶんぶんと首を振る。
そしてまた切れ切れに言った。
「ごっ・・・ごめんなさい・・掃除途中だったのよね・・・私のことはいいから、やってちょうだい」
――――――――――いや、無理でしょ。
この状況で、俺、仕事に戻って掃除するの。
困って頭を掻いた。