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 冴えない表情の妙子さんが立っていた。俺の驚きが大きかったのが面白かったらしく、口元は笑っていたけど。

 両手を合わせて、ごめん、驚かしてしまったね、と言った。

 その声も小さかった。


「・・・ああ・・・本気でびっくりした。どうしたんすか?」

 まだドキドキ言っている胸を押さえて俺が聞くと、何といきなり泣き出した。
 
「――――――・・・えーっと、何事ですか?大丈夫ですか?」

 目の前に立った妙子さんは、ごめんね~と言いながらぼろぼろと泣いていた。

 俺はモップを脇において、困って立ち尽くす。

 ・・・何で泣いてんの、この人。俺、どうしたらいいんだろ・・・。

「・・・だっ・・・ダンナと喧嘩したの。家を飛び出して来ちゃって、ここなら一人になれるかと・・・思って・・・まだ、大介君が、いる、と、は・・・思わなくて・・・」

 泣きながら言うから判読に苦労した。

 でもとりあえず、一人になりたくてここにきたらしいって事は判った。

 しゃくりあげながら言う妙子さんを、とりあえずソファーに誘導した。

「・・・・俺、消えたほうがいいですか?」

 ぶんぶんと首を振る。

 そしてまた切れ切れに言った。

「ごっ・・・ごめんなさい・・掃除途中だったのよね・・・私のことはいいから、やってちょうだい」

 ――――――――――いや、無理でしょ。

 この状況で、俺、仕事に戻って掃除するの。

 困って頭を掻いた。


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