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「・・・泣き声響く中で掃除なんか出来ないっす」
すると一生懸命涙を拭いて、そうよね、本当にごめんなさいって繰り返す。
俺はため息をついた。
そして涙の止まらないらしい妙子さんをソファーに座らせたままで事務所に入り、キッチンで、支配人のだけど昆布茶を入れる。
お茶の入れ方は居酒屋で仕込まれてる。とりあえず、落ち着いて貰わなければ。
妙子さんに手渡すと、化粧の取れた顔で驚いて、呆然と湯のみを受け取った。
「・・・・大介君・・・優しい」
所在ない俺は仕方なく、少し離れてソファーに座り、お茶をすする妙子さんを見ないようにしていた。
はあー・・・とため息が聞こえた。
「本当にごめんなさい。掃除の邪魔までしてしまったわ」
・・・・いいとも悪いとも、返事のしようがない。俺はただ頷いた。
「美味しい。私が淹れるより上手だね。どこで習ったの?」
「居酒屋です。あがり淹れるの俺の仕事でした」
ふーん、と言いながらお茶を飲む。落ち着いたようで、泣いたあとの顔のままで隠しもせずに座っていた。
「・・・お陰様で、落ち着きました」
「よかったです」
コトン、とチラシを置いているテーブルの上に湯のみを置いて、妙子さんがこっちを見た。
「・・・・何も聞かずにいてくれるのね」