10%
そして俺を見上げて、笑った。
「本当に、今日はごめんなさい。ビックリさせたし、迷惑だったでしょう。でも大介君のお茶で復活出来たわ」
その笑顔を見下ろしていた。
胸のところがざわざわした。
ほとんどスッピンの、目元と鼻を赤くした妙子さんの、瞳の色が焦げ茶であることも判ってしまった。
こんな表情はきっと、俺だけしか知らない―――――――――
俺はパッと視線を外し、いえ、と首を振った。
「・・・大丈夫です。帰り、気をつけてください」
はい、了解です、そうふざけて妙子さんは、先にドアを出てシャッターをくぐる。
俺は入口に鍵を閉めて、シャッターを勢い良く下ろした。
また明日ね~と手を振って妙子さんが遠ざかっていく。
俺はしばらくそれを見ていて、妙子さんの姿が視界から消えた後、シャッターに頭を打ち付けた。
ガシャン!!と凄い音がした。
「・・・いってぇ・・・」
何してんだ、俺は。
手の届かないものを好きになったって、どうしようもないんだぞ。
まだ10%だ。今は、まだ。
でもその内どんどん膨らむ予感がしていた。
この10%が・・・・。
一度深呼吸をして、歩き出した。
時間も遅くて、駅前は閑散としていた。