二番目でいいから[完]
〝二番目でいいから〟。
彼女とキスをした唇でキスをされただけで、こんなにも胸が苦しくなるくせに、あんなことを言った。
私は、酷い女だ。
……キスをしている際中に、パーカーの中で八尋の細く冷たい指が蠢いて、背中のホックに回った。
締め付けが無くなって、少し呼吸がしやすくなった。
ひんやりとした八尋の手が、心臓の真上に重なった。
その瞬間、ぽろっと涙がこぼれ落ちて、八尋の骨ばった腕に流れた。
今私を触っているこの手で、この人は彼女に触れなければならない。
私が、汚してしまった。
八尋はきっと、彼女に触れるたびに今日のことを思い出して辛くなるのだろう。
そう思うと、罪悪感でとめどなく涙がこぼれ落ちてきた。
八尋はそんな私を見て、今にも泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
「……っやめよう、ごめん、卯月、やめようっ……、やめよう」
「っ……ぅ」
「ごめん、怖かったよな」
「八尋……っ、ごめん」
「ごめん、卯月、ごめんな…」