泡影の姫
「ひどっ、そんなこというともう来ませんからね?」

「おう、来るな来るな。バカな患者が減って少しは俺の精神的慰めになるだろう」

「なっ!?医者としてその言いぐさはどうなんですか!?医療だってサービスですよ?」

「自業自得でのこのこやってくるバカ瑞希に施すサービスは持ち合わせてねぇよ。あいにくと俺は忙しい。文句があるなら来るな」

うっとここで私は言葉に詰まる。

確かに私の今回のけがは自業自得で、自分勝手に泳いだせいで腫れてしまったものだし。
先生の言い分はとても正しい。
だが、納得いかない。

どうしてこんなに態度も口も悪い先生の腕はピカイチで、しかも患者が途切れないスポーツ選手御用達の名医なんだろうか。

「不服そうだな、瑞希」

「いいえ~。べっつにぃ~?それより、水抜かないんですか?」

「炎症はあるが必要ない。とりあえず冷やして様子見。引かなければまた来なさい」

きれいに固定してもらったおかげで痛みも軽減されたし、今回は水抜きは不要とのことでちょっと安堵する。
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