泡影の姫
「先生……また近々痛むかもしれません。その時はお願いしますね」

「無理しないんじゃなかったのか?」

「失恋したら慰めてください。いま絶賛片思い中なんで」

私は苦笑してそんなことを先生に言ってみる。
自覚したばかりのこの気持ちの行く末を私はまだ知らない。
立ち直った後すぐ失恋したら私の気持ちが持たないかもしれない。

私の方をまじまじと見て一瞬言葉を失った先生は、

「いい精神科医を紹介してやる。うちでは診ないからな」

と少しだけ意地悪そうににやっと笑って私のことを診察室から追い出した。

どうやら今日も私の完敗らしい。

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