泡影の姫
「似てたから、私を連れ出してくれたんだよね?湊は」

困惑したように私を見つめ返す湊は、泣きそうな顔をしていて。
それでもゆっくりとうなずくことで私の言葉を肯定した。

「最っ低、だろ?そんな理由で見ず知らずの他人に彩愛を重ねて、適当に連れまわして」

私は首をゆっくり横に振る。
そして湊がそうしてくれたみたいにできる限り腕を伸ばして湊の頭を撫でてあげた。

「私が救われた事実は確かにここにあるよ」

たとえそれが私のためでなかったとしても。

「私は、うれしかった。湊に会えて、よかったと今もそう思ってる」

そう感じている今は、動かない事実だから。

今度は私が力になりたくて。

どうすればいいのか、今はまだわからないけれど。

「とりあえず、泣いちゃおうか?」

二人で、一緒に。

ここならたぶん誰にも見つからないから。
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