泡影の姫
「人魚姫ってすごいよね」

「どうしたんだよ、急に」

「別にどうもしないんだけど、そう思ったの。ただ、それだけ」

星がその命を燃やし切った瞬間、流れ星が流れるらしい。

なんだか、人魚姫に似ている気がする。

真っ暗な闇夜も。

真っ暗な深海も。

祈ったのだろうか?

人魚姫は。

泡になって消えるその瞬間、王子様の幸せだけを、静かに祈ったのだろうか?

相手の幸せだけをただ純粋に願うことができるのが大人なら、私は一生大人になれなくていい。

別の誰かと幸せに、なんて私は願えない。

だって私たち人間は、人魚姫みたいに消えることはできないのだから。

残された自分を一体どうすればいいんだろう?
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