泡影の姫
「ねぇ、湊。お誕生日おめでとう。19歳だね。私は冬生まれだから、ちょっとの間2歳差だね」

「ありがとな、祝ってくれて」

「うん。どういたしまして」

でもね、湊。
お礼を言うのは、私のほうじゃないかと思うんだ。

君に会えてよかったと。

今日、君の誕生日を祝えてよかったと。

そう思う私は。

「私は、やっぱり湊のことが好きだよ。湊が彩愛さんのことを想っていても、私は君が好きだよ」

あの日、星に願えなかった言葉を声に出してみる。

「湊を好きに、なってよかったってそう思うから」

花火が、とめどなく上がる。
私の声を掻き消すくらい、大きな音で。

「待っていても、いいかな?」

湊の気持ちが、どこに落ち着くのかはわからない。
私に向くとも限らない。

それでもせめて。

待っていたいって、思ったんだ。

「ああ…」

湊は片腕で両目を覆い隠すようにして空を仰ぐ。
大きな花火がまた一つ上がり、光を空から降らせる。

「今、すげぇ曲書けそう」

つないだ掌に、少しだけ力が籠る。
それが湊の答えだった。
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